第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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社会科学部で「スピーチ」などの科目を学ぶ1年生・2年生を対象に、CCDL(Cross-Cultural Distance Learning)交流を取り入れた授業を行っている山口講師。台湾の大学生と英語でコミュニケーションを取る「異文化交流」の機会を最大限活かすために、CCDLの目的を3段階に分けて設定するなど、独自の工夫を凝らして成果を上げている。授業の目的と各回のテーマを学生に提示することで、効果的なCCDL交流を目指す具体的な目的とトピックの設定で、CCDL交流の効果を高める 2013年度は、台湾の元智大学との間でCCDL交流の授業を行った山口高領講師。以前から、CCDLのクラスは受け持っていたが、2013年度はこれまで以上に積極的に運営に関わったという。 「商学部の鈴木利彦先生から、ご自身が在外研究で海外にいる間、それまで築いてきた元智大学との交流を維持・発展してほしいと依頼され、元智大学とのCCDLクラスを引き継ぐことになったためです。これまでの蓄積を生かしつつ、CCDL交流をさらによいものにしていくには何をすべきなのか考えました」。 CCDL交流では、Web会議システムの「Live On」を使用。回数は前後期の各5回で、1回の時間は50分。日本側と台湾側の学生がそれぞれ2-3人、合計4-5人で1つのグループを組んだ。 「これ以上多いと、散漫になってしまいます。本当は、どちらも2名ずつが最も望ましいかもしれませんが、最初から各2名でグループを作ると、一人が休んだら残りの1名で複数を相手にすることになり、負担が重くなりすぎるのでこの人数にしました」 CCDLの実施にあたっては、事前に「目的」を設定して学生たちに提示した。この「目的」こそが、山口講師がCCDLをよりよくするために導入したものだ。「これまで何年かCCDLを担当して感じていたことは、『何をすればいいのかよくわからない』という学生側の戸惑いでした。せっかく異文化交流ができる機会なのに、そんな状態では学生たちの意欲にも影響してしまいます」。どうしたら学生の意欲を高めて、CCDLを意味のあるものにできるか試行錯誤した結果、たどり着いたのが前述の「目的」だった。設定した目的は、「大」「中」「小」の3段階だ。 「まず、『交流の前後を比較してどんな変化があったかを考える、交流で得られた収穫を報告する』という大きな目的を明確にしました。また、就職活動などの際には、自分が送ってきた学生生活を語ったり、持っているコミュニケーション能力を伝える材料にもなるんだということを説明しました」 次に、大目的を達成するために2つの中目的を設定。「交流相手の学生に、もっと日本に興味を持ってもらう」と「交流の際、相手が困っていないかを常に気を付ける」だが、「後者については、台湾側の学生はCCDL交流が初めてなので、その点を意識してほしいという理由からです」。そして、中目標を実現するために「交流時に使いそうな英語表現を考える」、「自分が何を話すか、相手に何を尋ねるかを考える」など、3つの事前準備を小目的に挙げた。 また、5回の交流の中で話すトピック案も事前に用意した。たとえば、第2週は「食べ物について」で、具体的な質問として「好きな台湾の食べ物は何ですか?」、「食べるときのマナーはありますか?」などを挙げておいた。ある程度交流に慣れた第4週は、テーマを「音楽映画等の自国のモノや相手の国のモノの紹介や質問」とし、具体的には「あなたが好きなアニメは何ですか?」や「好きな映画は何ですか?」など、質問から日本と台湾の文化の違いについて話がふくらむようにした。最後となる5週目は「文化の違い、人間関係」などをテーマにしたという。 これらのトピックは、単なる思い付きで決めたわけではないと山口講師。「これまでの元智大学との交流実績から決定したトピックです。昨年度までのCCDLで、毎回終了後にトピックを振り返るアンケートを取っていたので、そこからどういう話題がよいのかを日本側と台湾側の担当者で検討しました」。 3段階の目的と具体的なトピック案、この2つのガイドラインにある程度沿うことで、学生たちはCCDL交流をスムーズに進めることができたという。「どういう方法が最も有効なのか、まだまだ検討の余地はありますが、教員側がCCDL交流の仕掛けづくりを考えることで、交流のクオリティは上げられると実感しています」。画像や動画を送り合うといった交流のやり方も登場 CCDL交流では、日本と台湾の学生が双方とも英語でコミュニケーションを取るのが基本だ。しかし、元智大学の学生が日本語も勉強しているという関係から、50分の授業のうち、最後の5分は日本語を使って交流してもらうようにしている。各回のトピックは、前述の通り大体決まっているが、交流のやり方自体は学生側に任せている。「実際の会話とテキストチャットの割合などは、グループによってかなり違いがありますね」。 最近では、CCDL交流の際に、テキストチャットで画像や動画を自然にやり取りしている学生が増えたという。 「たとえば、『この動画をちょっと見て』とYouTubeのURLを貼り42山口高領社会科学部講師(任期付)

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