第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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オープン教育センターが設置しているCCDL(Cross-Cultural Distance Learning)の授業は、「Social and Global Issues」「Media」「International Career Path」の3つのテーマが用意され、中国・台湾・韓国の大学を交流相手校として、春期・秋期各10クラスが設定されている。利用する交流システムは各クラス共通で、テキストも各テーマで同じものを使用するが、授業の具体的な運営方法にはそれぞれの担当教員の工夫がこらされている。音声チャットで話す訓練を重ね英語運用能力を伸ばす予習したテーマについて音声チャットでディスカッション 須永講師が担当しているのは、「Social and Global Issues」をテーマとして扱うクラスで、中国の大連外国語学院の学生と交流授業を行っている。各学期15回の授業のうち、初回にガイダンスを行い、続く2~10回目まで毎週の授業時間内に約30分間音声チャットで交流を行っている。双方に日本語や中国語を話せる学生がいても、チャットではすべて英語を使用するのがルールだ。そのため、この授業を履修するには、Tutorial Englishの中級以上(またはTOEFLの指定スコア)の英語力があることが条件となっている。 交流時は各回に1つずつトピックが用意される。テキストに関連する資料がCourse N@viにアップロードされており、学生はそれを参考に下調べなど予習を済ませて授業に臨む。授業内では日中各2~3名ずつのグループに分かれ、調べてきた内容を踏まえてディスカッションを行う。 交流のメンバーは、日中共に9回を通じて固定したメンバーで行っている。これはメンバーが代わる度に自己紹介で終わってしまうことを避けるためだ。「音声だけの交流ではありますが、画面上では顔も見えます。チャットルームという仮想の空間であっても、互いに授業時間を共有するクラスメートとしての意識が育まれるようです」。 相手が非英語圏の学生であるため、ネイティブの音声で学習を重ねてきた学生たちからは英語の発音が聞き取りづらいと不満の声が出ることもある。しかし、それはそれで大きな意味のあることなのだと須永講師は考えている。「実際に世の中に出て英語を使うのは、アメリカ人などネイティブの人々と話をするよりも、アジアなど英語を母語としない人たちと話すことのほうが多いはずだからです。そのことを学生たちにもよく伝えています」。交流後は教場で報告し合い振り返りの文章を投稿する 30分の交流が終了した後の残り時間は、早稲田側の学生同士でその回の交流内容を振り返り、どんなことを話し合ったか、どんな意見が出たかなどについて英語で報告する。「この授業ではとにかく英語で話す機会を多く与えたいので、なるべく全員の学生に発言させるようにしています」。交流がうまくいかなかった場合には、どうすればうまくいくか意見を交換するなど、単なる報告に留まらず、学生同士の横のつながりができるように配慮している。 授業の終了後は、交流の内容を100ワード程度でまとめ、翌週までにBBSに投稿する。「翌週にはもう次のトピックについての交流が始まってしまうので、必ず期限までに指定した分量の文章を書くことを義務づけています。文章の内容によって優劣をつけることはしませんが、期限までに提出しないと減点の対象とすることで、コンスタントに英語で文章を書くよう指導しています」。 他のCCDL授業では、チャット交流の後、ビデオ会議システムによる交流を行うこともあるが、この授業においては相手校にその設備がないため、リアルタイムな交流は音声チャットによるもののみとなっている。教場では留学生を交え英語を話す緊張感を保つ 相手校との交流は9回で終了し、それ以降は早稲田の学生だけでの授業となる。学生からはもっと交流の機会を増やしてほしいという要望も多いが、相手校とのスケジュール調整の事情でこれ以上はむずかしい。 そこで、2012年度からは交流終了後の3週に、早稲田に在籍する留学生にPA(Program Assistant)として参加してもらっている。PAは全CCDL授業共通で導入され、英語のレベルがネイティブに近いなど所定の条件を満たす者が選抜され、担当している。 「いくら英語を流暢に話せたとしても、日本人同士が英語で会話するという不自然な環境ではスイッチが入らないのです。そこにひとりでも母国語が日本語ではない人が加わることで、自然と英語で話せるようになります」。PAが参加するようになって、交流が終了した後の回の授業でも学生たちの意欲が落ちることなく、いい緊張感を持って授業が進んでいるという。 CCDLでの交流終了後の授業では、PAの意見を聞きながらテキストに沿ったディスカッションを続けるのと並行して、学期末に行うプレゼンテーションの準備を進めていく。プレゼンテーションはクラ26須永美奈子人間科学部非常勤講師

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