第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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なることもあり、全部を読むにはかなりの時間がかかる。「私がチャットのログを全文チェックした上で添削するのが分かっているので、学生もしっかり取り組んでくれています。負担はありますが、学生の理解度がよく分かるのでとてもやりがいを感じています」。学生からも、教員に直接修正をしてもらえるのがうれしかったという感想が寄せられているという。短時間に内容をまとめて話す即興スピーチの練習にもつなげる チャットを授業に活用するもうひとつの手法は、その内容をまとめて口頭で話すという実習だ。授業時間内に2分間程度の制限時間を設けて交流時にチャットで会話した内容をメモしてまとめるという作業の後、ペアワークで1分間スピーチ練習を行う。さらに、数名の学生には、授業時間内にみんなの前でも発表させている。 これらの訓練は、英検1級や、TOEFL、TOEICの受験を視野に入れたスピーキング練習としても役立つ。そして、口頭でまとめる作業が、その後その内容を書いてまとめる準備にもなる。「それらのテストを受けるときだけでなく、ある程度まとまった文章を書いたり話したりするときに話の展開を考える際にも、この練習は決して無駄にはなりません。長いものを簡潔にまとめて話す・書くというのはアカデミックな場に限らず、日常生活やビジネスにおいても必須のスキルです。その力を付けるために効果のある訓練なのだということを、学生たちにはよく説明するように心がけています」。活動の意義と目的を納得させ意欲を引き出すお膳立てが重要 この授業では、澤木准教授が着任した5年前にはすでにCCDLの交流が導入されていた。チャットとライティングの授業がどう結びつくのか、当初は自分自身も戸惑う部分があったという。しかし、どうせなら自分自身も納得する形でやりたいという思いから、どうやったらライティング能力の指導につなげていけるかを考え、年々工夫を重ねてたどり着いたのが現在の方法だ。 最初はトピックを簡単に提示するだけで、話し合う内容についてはそれ以上の指示は与えずに交流に臨んでいたため、チャットがほぼ自己紹介で終わってしまったり、メンバー間でテーマの解釈にずれがあるため話がかみ合わなかったりなど、有益な意見交換につながらないこともあった。そこで、あらかじめトピックを決めるだけでなく、当日までに何を話すのかを学生が心づもりできるような形でフレームを示したハンドアウトを用意し、交流先の学生にも共有してもらうようにした。「最初の年は、話題がどんどん違うところにそれてしまって、要約できるような会話にならないという状況もありました。今はあらかじめ要約を書くことを想定して参加するので、トピックから大きくそれることもなくなり、まとまりのある話ができるようになってきたようです」。 こうした経験を経て現在では、CCDLでの交流は英文ライティングの指導にもプラスになる要素がたくさんあり、素材として使わない手はないと感じている。「この授業は時間外の活動や要約の宿題など負担も大きいので、なぜこれをやるのかという説明がうまくできないと、学生は納得しません。それは5年間続けてきて強く感じているところです。彼らが活動の意義を理解して、自らやりたいと思えるようなお膳立てが重要で、それがあってこそ意味のある活動になるのだと思います」。各交流前に、相手校と話す内容を確認するハンドアウトを学生に提示。交流内容を事前に理解・整理させ、当日の交流を効果的に進める。交流のみで終わらせず、画像のようなチャットログを学生が要約をまとめる素材として利用し、パラグラフライティング学習に活用。交流と教場授業を有機的に結び付ける。25

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