第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
19/44

BBSを頻繁に活用することは将来的に本人のプラスになると感じています」。自分や他人の発表を見比べてプレゼンの質が向上していく Commons利用のメリットは学生の側にもある。教場での発表では、慌ててしまったり、機材の取り扱いでミスをしたりしがちだが、Commonsを使えば何度でもやり直しができるため、落ち着いて発表ができる。 また、参考文献をきちんと取り入れているか、論理に飛躍がないかなど、採点基準は学生たちにも公開されている。自分の発表を提出前に見ることができれば、この基準をクリアしているか否かをチェックして修正もできる。 自分の発表を客観的に見られることは、自分のクセや短所を知ることにもなる。「よいプレゼンテーションの例をたくさん見る、自分の発表を録音してみるということを、学生たちには今までも繰り返し勧めてきましたが、Commonsの導入で、それが簡単にできるようになりました。いつでも簡単に自分の発表を他人の発表と見比べることができるのはプレゼンスキルの向上に大きな効果があります」。「発表型授業にありがちな発表しっぱなしはよくありません。PDCAサイクルにおけるCheckとActの部分にあたる自分のプレゼンテーションの映像記録を後から見て、検証する振り返りは重要です。秋学期に行われる登壇してのプレゼンテーションのビデオ記録も別途システムを構築し、Commons同様CourseN@vi経由でストリーミング視聴できるようにしたぐらいです。」 他人の発表を見られるという点では、同時に履修している学生に限らず、過去の履修生の発表を見ることも可能になる。URLを教員から履修生に知らせれば、学生たちは各自のPCでそれを見られるからだ。「よい例を参考にすることで、スパイラル的にいい発表が生み出されていきます。いくつもの発表コンテンツが貯まっていくことで、プレゼンテーションの知がより積み重なり、質は確実に上がっていきます。現在では視聴覚教室内PCに限りますが、過去にテープ録画で蓄積されてきた13年分の発表もストリーミング視聴できるようになっています」。完全に閉じた環境ではないことが情報倫理を学ぶ機会になる 発表内容をいつでもどこでも見られるようになることは、便利である反面セキュリティの心配もある。アクセス用のURLは学籍番号などとは連動しないランダムな文字列となっており、検索サイトで表示されることもない。URLを学外に漏らしてはいけないことも学生には伝えている。しかし、学外で見ることができる以上100%安全とは言えない。 そこで、外部に出ると困る情報はコンテンツに含めないことをあらかじめ学生にも周知し、そうした内容が含まれていないか教員もチェックしている。授業の中では、個人情報保護や情報倫理などについても項目を立てて取り扱っており、公開していないつもりでもウイルスに感染して漏出した実例なども伝えている。つまり、外部には非公開を基本とするが、見られてしまう危険性も考慮してコンテンツを作成するということだ。 一方で、あえて一般公開を想定したコンテンツを作ることの意義を、川原講師は指摘する。「これは授業の一環としての制作ですが、将来的には職場で自分の企画を発表する機会も訪れるでしょう。そこでも通用するようなレベルのものを意識して作るようにと学生たちには言っています。そのためには、当然個人情報や著作権など倫理の問題をクリアする必要があるのです」。 通常、教室内での著作物の利用は著作権法の制限事項として扱われるが、Commonsを活用しインターネット上に公開する動画ではこの特例が適用されない。学生たちにはそのことも伝え、著作権法上利用できない著作物は使わないもしくは許可を取得するようにしている。「教室内ではOKで外ではダメという区別は難しいので、むしろここで覚えたルールがそのまま社会でも使えるというのは、学生にとっても役立つでしょう」。 前述のように、この授業の履修生向けには機材を揃えた環境が用意されているが、Commons自体は早稲田の全学生が利用可能だ。こうしたツールを使って発表のスキルを磨くことは、この授業に限らず幅広い場面で活用できるだろう。「各自が自分のアピール動画を作って就職活動などに利用するのもいいでしょう。そのためにも、いろいろな授業で導入されて、多くの学生が早いうちからこのツールが使えるようになるといいですね」。19川原健太郎教育学部非常勤講師

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です