第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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になるなど、基礎学力が大きく向上した。「単位を落としそうな学生を徹底的にケアすることで、全体のボトムアップにつながる結果となりました」。(中村准教授) この試験対策のため教材として提供しているのが「中国語基本単語帳」だ。商学部中国語教室が独自に作成した全クラス共通副教材で、一年次必修単語(中国語検定4級・HSK3級レベル、およそ600語)を網羅し、発音学習用CDも巻末に付けていたが、実際にはあまり学生は利用されていなかった。そこで、2013年度に2年生向けの必修単語(中国語検定3級・HSK4級レベル、およそ800語)と例文も追加した改訂版を作るにあたり、付録CDに代えてネイティブ教員が発音する音声ファイルをCourse N@viにアップロードすることにした。この方法ならCDメディアを使っていた時と比べてコストが削減できる上、修正の必要が生じたら随時更新できる点も便利だ。 学生はCourse N@viにアクセスしてこの音声ファイルをダウンロードすれば、各自のパソコンやスマートフォン、携帯音楽プレーヤーなどで再生できる。コピーした段階で自動的にインデックスがついて頭出しもできるようになっているため、手軽に必要な部分を選んで繰り返し学習できる。この形式にしてから、CDを使っていた頃に比べると、音声ファイルをダウンロードして聴いている学生ははるかに多いようだという。「体育会の学生などには、机の前に座る時間がなければ、移動の電車の中で聴きなさいというような指導ができるようになりました。」(中村准教授) ネイティブの音源をダウンロードして聴きやすい環境を提供したことは、モチベーションの低い学生の底上げに貢献しただけでなく、余力のある学生がさらに熱心に学習し満点に近い点数を取るなど、やる気に応えて力を伸ばす効果も上げているという。また正しい中国語の音に触れる機会を増やすことにより、発音の矯正にも一役買っている。目的をきちんと見据えて対面とのベストミックスを 学生全体の基礎学力向上を目指したこの統一試験の導入に際しては、より総合的な学力を測る形の試験も検討された。しかし、複数の教員が担当している状況で教員による指導の独自性を生かすには、最低限の共通項としての単語という基礎学力に限定するという結論に至った。 各クラスの平均点は公開されており、教員は自分の担当するクラスの点数が他のクラスより低ければ、他の教員に相談するケースもある。単語帳という教材と統一試験という目的を共有することで、教える方法論や考え方などを語り合う機会が生まれ、互いに切磋琢磨することにつながり、新たな力を生み出している。 「私たちが今やっていることは、まだ試みの途上だと思っています。今後、Course N@viを使ってさらにさまざまなものを共有可能になってくるでしょう。それは、単なる教材の共有に留まらず、教員同士の対話によって互いの認識をぶつけ合うことに繋がります。考え方が違う部分はあっても、共有できる部分を共有していくことで、省力化できるところを省力化してより効率的なものを創り出していく。その結果、教員一人ひとりの力が合わさって10倍、20倍になれば、さらに大きな効果を上げると期待しています」。 小川教授が繰り返し強調するのは、Course N@viを活用するためには生身の人間による創意工夫が不可欠だということだ。動画や音声で教材を作ってアップロードすれば終わりというのではなく、学生に利用を促すための課題や指示、激励など教員からの働きかけがないと、学生は動かない。「Course N@viの向こうに何が見えるのかということです。学生の学力の向上や、教員の教える技術、ノウハウ、考え方の共有といった目的をきちんと見据えた上で、魂を入れる。コンテンツの中身を充実させ、さらにそれが機能するような仕掛けをつくるには、対面での指導とのベストミックスが欠かせないと私は考えています」。ネイティブの発音を繰り返し確認・練習できる自修用のオンデマンド教材。Course N@viを通じて、対面授業と連動する動画コンテンツ、音声コンテンツを提供している。中国語基本単語帳のmp3音声教材はCourse N@viからダウンロードでき、モバイル端末などからいつでも自習できる。15

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