事例集Vol.3
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Course N@viデビューへの一言!15したオムニバス形式で講義を行う。履修する学生はネイティブの留学生が1/3、バイリンガルに近いが読み書きはあまり得意ではないというレベルの学生が1/3、残りの1/3は留学経験があり、ある程度の会話ならできるという日本人学生という構成になっている。 講義はすべて中国語で行われるため、中国語の得意でない学生たちのために、講義で使われる専門用語をフォローする目的でチャット機能を使うことにした。「学生からこの言葉がわからないと質問されたら、私や中国語の得意な学生が教えてあげるというように、通訳補助ツールとしての利用を想定していました。」 ところが、実際に使い始めてみると、こうした語学力のフォロー以外にも、思わぬ効果があらわれた。「講義の中で出てきた内容について誰かが質問をすると、ネイティブの学生が関連情報をインターネットで検索して紹介するなど、学生間で情報を共有できるツールとなったのです。」 ときに話が脱線し、チャット上で雑談が始まることもあるが、かえってこうしたやりとりの中で学生同士が相手のことを知り、お互いに支え合いながら授業を盛り上げていく雰囲気が生まれたともいう。「言語的にも文化的にもバックグラウンドが違う学生が集まっているこの授業の中では、一種のコミュニケーションツールとしても大いに役立つということを感じました。ですから授業と関係のない発言もある程度許容しています。」 チャットの発言が講義のテーマからあまりにも逸れてくると、必ずそれを軌道修正する学生が出てくるそうだ。「教員が特に注意をしなくても、話が横道に逸れたままで終わることはなく、また授業のテーマに戻っていきます。学生たちがそういう相互自浄力も持っているということは新鮮な驚きでした。」 こうした現象の背景には、教場という共同体で講師、学生がチャットを行っていることと関係しているようだ。「熱心に講義する講師の話を理解したいと願う学習者同士が、チャット上で協力関係を結ぶ際、挨拶代わりにちょっと脱線するのでしょう。でも学生たちも間近で講師の熱意を感じているので、本題に戻ってくるのかもしれません。そこが、顔の見えない離れた場所で行うチャットとの違いだと思います。」 授業終了後に、講義の担当教員にチャットのログを見てもらう1人対40人という関係でも、チャットを使うことによって、学生たち一人ひとりのモチベーションを知り、それを活かした指導をすることができます。こんな便利なツールを使わない手はないと思いますよ。こともある。「自分の講義に対して学生がどのような反応をしているかを知る、いい記録になっているようです。」ポイントは、自由に発言できる空気を作ること このようなチャットの活用を通して砂岡教授が感じたのは、自由に発言できるムードを作ることが、学生たちのモチベーションを上げる結果につながるということだ。「チャットは授業効率を上げるという意味でも大きな利点があるのですが、あまり効率を前面に出すと、かえって学生のやる気を削いでしまう面もあります。学生が自由に情報共有やコミュニケーションをするためのツールとして開放しておくことが、チャットを有効利用するポイントの一つかもしれません。」 また、授業にチャットを導入してみたことによって、砂岡教授自身の認識にも変化があったという。「学生と対等にチャットを経験してみて、教員の側も自己開示を行い、協調学習に参加することで、学生が近づきやすいと感じ、勉強する意欲をかきたてるのだということを実感しました。」 チャットで得た経験を活かし、PCを使わない教場でも、話題を共有し、互いに補完しあいながら学ぶ授業を試みたところ、学生との交流が非常にうまくいったそうだ。 毎年新しく出会う多くの学生たちを前にして、教員が学生一人ひとりの能力やモチベーションを把握するのは容易ではない。「語学のように個別の能力差がある授業では、チャットは特に有効だと思います。個別対応と協調学習が効率的にできるので、基本的なスキルを全員にくまなく提供するには、最適のツールなのではないでしょうか。」画面(語学授業での、聞き取りにチャットを使っている画面)教員が中国語を発音し、学生各自がチャット聞き取った内容を画面上に入力する。うまく聞き取れない箇所も、他の学生の回答を見て正解を知ることができる。

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