事例集Vol.3
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14中国語の聞き取りテストをチャットで実施 砂岡教授が最初にチャットの利用を思いついたのは、中国語の授業における聞き取りテストへの応用だ。中国語は文字と音声が直接リンクしない言語であるため、初級レベルでは、まず発音と漢字表記の関係を覚える必要がある。その点、発音をアルファベットで示した「ピン音」をローマ字入力で漢字に変換するPCでの入力法に慣れることは、音声と漢字との関係を覚える訓練にもなる。 そこで、PC教室を利用し、聞き取りテストの解答を各自でWordを利用して入力させていた。それを現在は、チャットの画面上で入力させるようにしているのだ。 その一番のメリットとは、チャットの画面では入力した文字が他の学生にも見える点なのだという。人より早く正解を投稿したいというモチベーションが上がる上、先に投稿された他人の解答を参考にすることもできる。「解答がいくつも投稿されると正解が8割ぐらいを占めてくるので、よくわからなかった学生も正解らしきものがわかってきます。実は、他人の解答から学ぶというのも重要なポイントで、教員から正解を教えられるよりもずっと大きな教育効果があるのです。」 読み上げた単語やフレーズは、中国語で書き取るか、もしくは日本語訳を書いてもよいことにしている。「うまく聞き取れなかった場合も、誰かが投稿した日本語訳がヒントとなって正解が分かることがあります。逆に、漢字変換はできても意味がわからなかった場合のフォローにもなります。」 Wordを利用して提出させるとフィードバックが次週の授業になるため、そのタイムラグにより教育効果が薄れてしまいがちなのに対し、その場で正解がわかるという点も、チャットを使うメリットだ。 以前はこれと同じことをCourse N@viの小テスト機能を使って実施したこともあった。「小テストでは他人の解答が見えないので、全員が正解にたどりつくまでに私が何度も繰り返して発音する必要がありました。チャットなら他の学生の解答を参考にできるため、私は1回発音しただけですみ、授業効率がかなりアップしました。」 ただし、チャットの場合、いち早く正解を投稿する学生が固定化Course N@viの機能の一つである「チャット」は、一般のインターネット上でもよく利用されているオンラインツールだ。通常は、離れた場所にいる者同士がリアルタイムに文字で会話をするために使われるこのチャット機能を、砂岡教授は教場内の授業で利用している。そのユニークな活用法の効果についてお話を伺った。してしまう傾向があり、得意でない学生にとってはやる気を失ってしまいがちだ。「その辺りが現状の課題です。学生のレベル別にグループ分けするなどして、すべての学生がモチベーションを保てるような工夫が必要と考えています。」質疑応答もチャットを使うと効率的 中国語の授業では、チャットを質疑応答にも利用している。「40人を超える規模のクラスともなると、一度に質問を受け付けることができません。同じような質問が重複した場合でもチャットなら一目瞭然で目に入るので、まとめて回答することもでき、非常に効率的です。」 初級のクラスでは、自分の質問したい部分の中国語がうまく発音できないため、口頭ではうまく質問できないケースもある。その点、文字なら確実に伝えることができる。初級クラスでは、あらかじめテキストの内容を中国語で入力したデータを配布しておくという工夫もしている。「これを使えば質問したい部分をコピー&ペーストして流用できます。入力の負担を減らすことで、質問の時間を有効に使えるようなりました。」 さらに、質疑応答にチャットを使うもう一つの効用として、質問内容が共有できる点を挙げる。「優秀な学生ほど質問の質も高いので、相互に閲覧すること自体、とても勉強になっていると思います」。 自由チャットは授業の最終仕上げに行い、中国人留学生にも参加してもらう。ネイティブとの自由チャットは、散漫に短文が続きがちだか、教員がうまく指導することで、覚えてほしい文型に誘導したり、新しい単語をコミュニケーションの中から覚えさせる効果があるという。「対面ではなかなか中国人と会話できない学生たちも、チャットだと話しやすいようです。チャットで会話を積み重ねた経験が、実際にオーラルで話す前段階の訓練としても役立っています。」講義と並行したチャットで情報共有効果 こうした経験を経て、今年から「中国の社会」というCCDLの授業でもチャットを活用し始めた。この授業は、中国人講師を中心と砂岡和子政治経済学術院教授教場でのチャット利用が、有効な情報共有ツールに

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