事例集Vol.2
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06eスクール用に作ったオンデマンドコンテンツを、通学生にも活用 向後准教授が所属する人間科学部では、2003年より通信教育課程(通称eスクール)を開設している。このeスクールにおいては、オンデマンドのみでも卒業することが可能であり、講義受講、レポート提出、小テスト受験、ディスカッションなどがWeb上で行われる。つまり、世界中どこにいても、インターネットに接続できる環境さえあれば、教育が受けられるシステムになっているのだ。 そんな背景もあり、向後准教授が担当する3つの講義科目の全授業は、すでにオンデマンドコンテンツ化された状態にあった。同学部では、eスクールと同じ科目でも通学生に対しては対面授業を実施するのが普通だが、向後教授の場合は、2008年度より、eスクール用に作成したオンデマンドコンテンツを通学生に対しても活用している。 とはいえ、「すべてをオンデマンドで行うと、通学生である意味がなくなってしまうのでは」という考えから、オンデマンド授業と対面授業を組み合わせて行うのが向後准教授の活用法だ。つまり、1回目は教室で従来通りの授業を行い、翌週はオンデマンドの授業を受講させ、その次の週にまた教室で授業を行う。このようにオンデマンド授業と対面授業を隔週で交互に行い、15回目は教室の授業で終える。 オンデマンド授業を受講した後は、簡単なテストやレポートを課す。そこで各自が予習した内容に基づき、次の週には教室において小グループの実習を行っている。 従来は、90分の授業のうち、毎回最初の30分で講義を行い、残りの60分で実習を行っていた。しかし、実習時間が不足することがあるのに加え、今レクチャされたばかりの内容を、学生がその場ですぐに理解して実習に生かすのは難しい面があったという。 その点、あらかじめオンデマンド授業を受講させておけば、翌週は授業開始と同時ににすぐに実習にとりかかることができる。レポートなど予習を終えた状態で実習に臨むことで、以前に比べ学生の意欲も向上し、はるかに効率がよいという。「小グループでの作業では、予習をしてこないとまわりに迷惑をかけるので、学生たちも十分に準備してくるようです」。 この試みを初めて実施した2008年度の春には、オンデマンド授コンピュータを教育に活かすというアプローチから始まる教育工学が専門の向後准教授にとって、Course N@viの導入は自然な流れだったという。今では、お知らせ機能からレポート提出、小テスト、成績管理、そしてオンデマンド授業まで、あらゆる機能を使っている。そんなヘビーユーザーならではの、今後期待される活用法について伺った。業用に用意された15回分のコンテンツ視聴を隔週で消化するために、1週に2回分ずつ受講させる必要があった。しかし、学生への負担が大きかったことから、同年度秋に実施した科目では、オンデマンド授業は8回分として収録した。「1週おきに対面授業1回、オンデマンド1回のペースで進められるので、かなり効果的であるという感触を得ました」。 オンデマンド授業を取り入れた結果の単位取得率は約80%程度で、対面授業と変わらない数字をキープした。「学生にとっても、時間や手間はかかっても、自分の努力がきちんと報われる授業ならば、しっかりやるということなのでしょう」と向後准教授は分析する。「教員にしても、Course N@viを使うようになれば、かえって、いい加減な授業はできなくなると思いますよ」。 「この方法だと、教室での講義が2週間に1回に減ることで、教員の労力は格段に軽減します。その分のエネルギーを教室での実習に注げるようになるので、より効果的な教育が行えます」。学生の側でも、毎週実習を行っていたときと比べ、隔週での実習は気力が充実して士気が高まっているようだという。 現在は、人間科学部においても、通学生に対してオンデマンド授業を活用しているケースはまだ少ないという。「人間科学部の場合、せっかく作ったオンデマンド用教材があるのですから、これを利用しない手はないと思います。今後はもっと増えてくるのではないでしょうか」。向後准教授は、一度作成したオンデマンド授業用コンテンツは3年間使い、3年後にまた撮り直す予定だ。2009年度からは、ゼミにもオンデマンド授業を導入予定 オンデマンド授業と対面授業を組み合わせるというこの方式を、2008年度は担当する3つの講義科目で実施した。加えて、2009年度からはゼミにおいても、この方式を導入するという。 たとえば、卒論のテーマを決めるにはどうすればいいか、どんなテーマがよいか、参考文献はどのように調べるかなどについてレクチャした内容を、あらかじめオンデマンド授業で受講させた上で、次の週に教室で顔を合わせて作業を行う。事前に、各自で3つぐらいテーマを考えてBBSに書き込ませておくことも考えている。「10数人で構成されるゼミにおいて、隔週でしか顔を合わせないという進向後千春人間科学学術院准教授オンデマンド授業と教場での実習を組み合わせ、より効果的な教育を実践

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