e-TeachingAward Good Practice集
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時間を確保するのは困難です。そこで、自分自身が関心のあるニュースや天気予報、ドラマや映画などを利用してシャドーイングを実践すれば、1日の生活の中で無理なく練習を重ねることができます。そのためにシャドーイングの手法を使って、練習を継続させる工夫をしています」。BBSと発音チェックで一方通行ではない仕掛けを作る オンデマンド授業では、教員や他の学生と直接接する機会がないため、モチベーションの維持が問題となる。その点に配慮するため、この授業ではBBSが活用されている。各回の授業で扱ったトピックに関連する話題をメンターがBBSに投稿し、学生がこれに自由に答える形で交流を重ねるというものだ。対応には、戸田教授の研究室の大学院生6名が参加している。「たとえば、アクセントに関して自分の母語にはこういう特徴があるなど、ひとりの書き込みに対していろいろな人が意見を書き込んでいくことで、話題が広がっていきます。他人の書いた書き込みを読んでいるだけでも勉強になるという声も多いです。一問一答の質問コーナーではなく、議論が活性化する場となっています」。BBSには、学習に役立つサイトなどの情報が掲載されることもあり、学生同士の情報交換、モチベーションアップに役立っているという。 さらに、レポート提出機能を利用して、学生が自分の発音を録音して音声ファイルとして提出すると、メンターからコメントが返ってくるという仕組みを導入した。自分の発音の具体的な問題を指摘してもらえるこの「発音チェック」では、要望があれば、日本語ネイティブの音声を送り返してもらうこともできる。対面授業で自分の発音を指導してもらえる回数は限られてしまうが、この発音チェックは何度でも好きなだけ利用することができる。 BBSや発音チェックの使い方についても、前半の対面授業の際にじっくりと説明して、自分だけでも確実に利用できるよう指導している。「せっかく用意したシステムを効果的に使ってもらうために、学生に丸投げするのではなく、やり方の分からない人にはきちんと手助けするよう心がけています」。そのため、必須ではないにも関わらず、BBSも発音チェックもかなり活発に利用されているという。 「BBSや発音チェックを活用することで、学生は自分だけで勉強しているという孤独感を感じず、クラスメートやメンターなどと、みんなで授業を受けているというイメージを持てているようです」。自主学習できる工夫で練習時間が飛躍的に増加 講義コンテンツ自体は15~20分程度の長さだが、ところどころで発音の練習をしながらこれを視聴し、BBSへの書き込み、発音チェック用に音声ファイルを録音して送信といった一連の学習を続けると、ちょうど90分程度になるように配慮されている。「それにプラスしてシャドーイングの継続練習もするようになっているので、練習回数は圧倒的に増えています」。それまで発音を学習する機会がなかった学生にとって、その方法を学び、学んだ内容を意識しながら日々継続練習をすることで、学習成果が生まれているという。 「発音チェックで送られてくる音声を聞いていても、明らかに回を追って上達していることが感じられます。学生たち自身も、まわりの日本人から『発音がきれいになった』とほめられたなど、手応えを感じているようです」。 オンデマンド授業というと、収録したものを配信するだけというイメージがある。しかし、この授業では一方的にコンテンツを見せるだけではなく、BBSや音声ファイルのやりとりという手法も組み込んで双方向性を確保している点が、学習成果を上げる大きなポイントとなっているようだ。戸田教授は、今学期の授業実践を分析し、その結果を踏まえたうえで、来学期さらに発展させていきたいと考えている。 日本語発音オンデマンドコンテンツと発音練習ボタン資料コンテンツに音声ファイルを埋め込んだシャドーイング教材学習者が自分の発音を提出すると、メンターがチェックし、フィードバックが返ってくる仕組み05オンデマンド授業部門賞

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