e-TeachingAward Good Practice集
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Twitterは、ここ数年、若者を中心に利用者が急増しているSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)だ。インターネットに接続できる環境さえあれば、PCはもちろん、携帯やスマートフォンからでも、簡単に140文字以内の文章を投稿することができる。尾澤准教授は、このTwitterを使って授業中の質問や意見をリアルタイムに投稿させ、Course N@viと連携して活用している。その利用法と効果についてお話を伺った。Twitterで学生の疑問点を把握し授業理解度の向上につなげる授業中にTwitterで質問ログをCourse N@viに掲載 教育工学・知識科学を専門とする尾澤准教授は、インターネットなどの情報通信技術を用いた教育実践を研究領域としているだけあって、現在担当している授業において、Course N@viのほぼ全ての機能を利用しているという。 その中でも特にユニークな試みとして注目したいのは、大教室で行う授業で導入しているTwitterと連携した利用法だ。この授業では、15~20分ほど講義を行った後、学生たちが各自で課題に取り組み、提出用の用紙に記入する。そして、その内容について、数人の学生同士でグループディスカッションを行うという流れになっている。 この授業では、質問や意見のある学生は、いつでも自由にTwitterに投稿することが出来る。Twitterには、「#(ハッシュタグ)」という記号に続けてキーワードを入れて投稿すると、関連する投稿を簡単に一覧表示できる機能がある。これを利用し、あらかじめ指定しておいた授業用の識別キーワードを添えて投稿させることで、授業への投稿のみを並べて読むことができるようになるのだ。 投稿内容については特にルールを設けてはいない。「主に期待し いるのは、講義中に分からなかったことに対する質問です。私自身は授業中には投稿しませんが、学生が課題やディスカッションをしている合間にチェックして、簡単な質問にはその授業内でコメントすることもあります」 Twitterに投稿された内容は、授業終了直後にTAがログのまと作業を行い、そのURLをCourse N@viの資料コンテンツとしてアップロードしておく。尾澤准教授もこのまとめサイトは必ず確認し、Twitterに投稿する形で質問に答えるほか、学生の理解が不足していると感じられる内容については、次回の授業で補足することもある。他人の投稿を読むだけでも理解度が深まると好評 投稿は質問だけでなく、それぞれの学生の意見がコメントとして書き込まれることもある。講義を聴いたり、ディスカッションをする中で自分が感じたことを投稿しておけば、投稿者本人も記録として残せるだけでなく、他の学生がどう考えているのかを知ることができる。「授業では、なるべく多様性を引き出すような問いかけをしているのですが、グループディスカッションでは、せいぜい4~5人の間でしか情報交換ができません。その点、Twitterを使うと、より多くの人の意見を知ることができます。このことは、自分自身は投稿せずに見ているだけの学生にとっても、勉強になっていると思います」 この授業では、履修生に対し、Twitterに投稿することを義務づけてはいない。200~300人が履修している中で、実際にTwitterで投稿する学生は、約20%程度だという。アンケートの結果では、よく投稿する学生、そうでない学生のいずれも、「Twitterの導入により、授業の理解が深まった」として好評だそうだ。 Twitter自体はオープンなサービスなので、ここでのやりとりは、指定したハッシュタグさえ知っていれば、履修者以外も見たり投稿したりすることができる。そのため、この授業を現在履修している学生だけでなく、前年の履修者が追加の情報などを投稿してくることもある。「彼らが社会人になった後も、こういう参加の仕方を続けてくれるといいなと期待しています」 さらには、他大学の教員が情報を寄せてくれるケースもあるのだという。「私にとってはプレッシャーがかかる部分もありますが、オープンにしていることのデメリットは、今のところ感じていません。むしろ、幅広い情報が得られるのは、学生にとって大きなメリットだと思っています」学生が使い慣れたツールで授業参加の敷居が下がる Twitterの利用方法については、初回にマニュアルを配布するなど説明も行っているが、8割程度の学生はすでに使ったことがあるようだ。「携帯から気軽に利用できますし、日常的に使っている学生にとっては、参加への敷居がかなり低くなっているようです。使い慣れたツールで気軽に授業参加する経験を重ねることで、Course N@vi等のツールを使いこなすためのきっかけになれば良いとも思っています」 Twitterのアカウントは本名での登録ではないため、投稿者がどの学生であるのか、基本的には分からない。「提出用の用紙に自分のアカウント名を書いていれば、その学生がTwitterでどんな投稿をしていたか分かります。しかし、積極的に投稿したからといって、それを34尾澤重知人間科学学術院准教授

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