e-TeachingAward Good Practice集
33/48

面で埋め合わせて同じ土俵に立たせるかというのが、非常に重要なことなのだという。「授業のグループワーク時にも、自分の使い慣れたSNSを使っていいかと聞いてくる生徒もいます。しかし、あえてCourse N@viという共通したひとつの空間を利用することで、学校教育の中で、情報社会について教員もいっしょになって学んでいくことに大きな意味があるのだと感じています」。 この授業を通して、生徒たちのICTスキルが大きく伸びるのはもちろんだが、情報モラルについての学びも大きいという。「日々の活動の中では、教員から指導を受けたり、他の生徒の発言を見て学んだり、授業という場面の中だからこそ得られる矯正のチャンスがあります。こうした体験を一つひとつ重ねる中で、こういうことはダメなのだということが、生徒たちにも少しずつ分かってきているようです」。精神的にもまだ発達段階にある高校生だからこそ、Course N@viという安心して利用できるクローズドな環境でネット社会を疑似体験できる意義は大きい。教員、ICTスキルに長けた生徒、未熟な生徒がいっしょになってさまざまな体験を積んでいく中で、やって良いことと悪いことの判断を学んでいくことは、まさに学校における情報教育ならでは貴重な体験と言えそうだ。自分で体験することでICTのメリットデメリットを学ぶ 一方で、実際にやらせてみると、生徒たちがBBSやチャットでディスカッションを行うことの難しさも感じているという。「高校1年生では、対面でディスカッションをするスキルも未熟です。ICTでのディスカッションをスムーズに行うには、課題の出し方の工夫や、教員のファシリテーションスキルなど、まだまだ改善の余地はいろいろあると思います」。 改善案のひとつとして、ディスカッションの方法を、テーマによってはグループごとにBBS、チャット、対面の話し合いから自由に選べるようにすることも考えている。ただし、この場合も、実際にICTで何度かやってみた上で選択するというところに意味がある。「生徒たち自身が、実際にBBSやチャットを体験してみて、そのメリットとデメリットを体感していることが大事です。その体験を基に、いったん離れたところから見つめてみて、グループワークを進めるためにはどういう方法が有効なのか、自分たちで考えられるようになってくれることを、期待しています」。 すなわち、授業の中でICTを体験することによって、この場面で本当にICTが必要なのかということ自体についても、生徒たちに考えさせる機会を提供できるということだ。「この場面では使えない、ここは使うと便利という線引きが、生徒たちの間にも少しずつできているようです。授業のアンケートでもそういう声が出てきているので、それも取り入れつつ、すべてをICTで解決しようというのではなく、その必要性を授業の中でみんなで考えていきたいと思います。そんなフィードバックがすぐにできることも、この授業の大きな収穫です」。 この授業は2012年度から始めてまだ1年目だ。まだ具体的な成果を分析するというところには至っていないが、荒巻教諭自身は大きな手応えを感じているという。「初めての取り組みでまだ試行錯誤しながらやっている状態ではありますが、次の単元ではこういう風にやっていこうというように、年度の途中でも授業デザインを少しずつ改善していけるところはすばらしいと感じています。今後もCourse N@viを上手に活用しながら、生徒たちのICTリテラシーを伸ばすと同時に、体験型授業を通して、実際の情報社会のさまざまな仕組みや光と影を伝えていけたらと考えています」。33授業風景学習前小テストの例授業中にチャット機能を利用してグループディスカッションを行うCourse N@vi活用部門

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です