e-TeachingAward Good Practice集
26/48

オープン教育センターでは、「英語を使いこなす」ための科目として、前・後期各11クラスの異文化交流科目「Cross-Cultural Distance Learning(CCDL)」を開講している。この授業では、早稲田大学と、中国や台湾、韓国の大学の学生とをネットワークで結んでライブディスカッションを行い、英語による異文化交流を行っているのが特徴だ。海外との音声チャットやTV会議で、英語で交渉する力を身に付ける少人数の音声チャットとTV会議システムを使った発表 現在、「Cross-Cultural Distance Learning(CCDL)」には、「Media」「Social and Global Issue」「International Career Path」と、ディスカッションのトピック別に3つのコースが用意されている。そのうち近藤助教が担当しているのは「International Career Path」で、台湾の淡江大学を相手校に、ジョブハンティングやワークライフバランスなどの問題を取り上げている。参加学生は、用意されているトピックについて事前リサーチを行ってきた上で、授業時間内に英語を使ってリアルタイムディスカッションを行う。 Joint Sessionと呼ばれるこのディスカッションには、Live OnというWeb会議システムを活用し、少人数による密な交流を行っている。日台それぞれ3~4名ずつ合計6~8人で1つのグループを作り、それぞれが教室内でヘッドフォンとマイクを着けて個別にPCに向き合い、互いの映像を見ながら約60分間音声チャットで意見を交換し合う。各Joint Sessionの前後には早稲田の学生同士で話し合う時間を15分程度ずつ設け、その日のテーマについての情報や意見を交換したり、ディスカッションの内容確認や感想を述べ合ったりして、より学びを深めるように工夫している。 終了後には、Reflection Essayと呼ばれるレポートを100語程度でBBSにアップさせる。これには他の学生がコメントを付けることもできるようになっている。コメントをもらいやすくするために文章の末尾を疑問形にすることを促したり、他人のレポートに対してなるべく1回はコメントを返すよう奨励したりと、活発な交流が図れるような仕掛けも行っている。 Joint Sessionを5回行った後は、TV会議システムを使って両教室を結び、双方がプレゼンテーションを行う取り組みも実施している。各大学内で複数のグループを作り、Joint Sessionで取り上げたトピックに関連したテーマをさらに掘り下げる形で、資料などの事前準備を重ねて発表を行う。発表後は質疑応答を行う時間も設けている。 これらの交流の実践に先立ち、初回の授業では、授業の進め方について説明するイントロダクションを行っている。ここでは、Course N@viやLive OnなどICTツールの使い方を説明するほか、ディスカッションをうまく進めるためのファシリテーションスキルも教える。その上で、ディスカッション時には毎回交代でひとりの学生にファシリテーターを担当させ、なかなか意見を言えない人に発言を促したり、話し過ぎる人を止めたり、あるいは時間の管理を行ったりという円滑な交流を手助けする役割を担わせている。 「お膳立てまでは教員がするけれども、ディスカッションの内容には基本的にタッチしません。初回だけすべてのチャットルームをチェックしてフォローをする程度にとどめています」。コミュニケーションツールとして英語を使う練習をする 授業中は英語以外使用しないため、Tutorial Englishの中級以上を終えていること、あるいはTOEFLで所定の得点を取っていることなど、履修のための基準を設けている。実際には、参加する学生の英語力にばらつきが生じたり、相手校とのレベルに差が出たりすることもあるが、グループ分けに際して英語力は一切考慮されない。「英語の得意な人、プレゼンが上手な人、資料を作るのがうまい人などが混在することで、互いに教え合う協調学習の効果が生まれます。これは教える側の学生にとっても勉強になるので、こうした授業ではレベル分けをあえてしないことにメリットがあると考えています」。 この授業に参加するのは、それまでは実践的に英語を使った経験のない学生が半数以上だ。彼らにとって、海外の大学生と英語を使ってディスカッションをするという体験は新鮮で、もっと英語を勉強したいという動機付けになるケースは多いようだ。「1度CCDLの授業を体験すると気に入って、3コースすべてを履修する学生もいます。1コースで5、6回ディスカッションを経験したからといって英語力が目に見えて上達するわけではありませんが、こういう授業を何度も体験すると、相当力が付くのは間違いないでしょう」。 しかし、この授業の本来の目的は、英語力の向上そのものよりもむしろ、英語を使って異文化を学ぶことにある。「こういう言い方をしても台湾の人には通じないとか、中国人はこういう風に言26近藤悠介オープン教育センター助教

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です