e-TeachingAward Good Practice集
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は思わなかった」「一斉授業ではなく、個人として授業を受けているという感じがした」などの声が上がっている。オンデマンドという授業形態についても、「何度も見返して復習できる」と肯定的な声が多かった。 さらに、授業を受ける前よりも「小論文やレポートを書くのが好き」と答える割合が増えるという結果も出ているという。実際にどのぐらい文章力が向上したかを調べてみると、どの学年の履修者も同じような伸びがあったのだという。「すでにたくさんレポートなどを書いている上級生でも、1,2年生と同じように成長しているのは予想外でした。このことから、学術的文章を書くスキルをきちんと学習しないまま、学年が進んでしまっているケースがいかに多いかを実感しました」(佐渡島准教授)。 学部生の成長と並んで手応えを感じているのは、指導員を務める院生もまた成長していることなのだという。「指導の経験を重ねることで、文章指導者として成長していくだけでなく、自分自身が書く文章も磨かれてきて、修士論文を書くのにとても役立ったとか、投稿論文が通りやすくなったなど、自分の成長を実感できたという声がたくさん寄せられています」(太田助教)。さらに、他の教員が自分の大学院ゼミの院生が指導員になったことで成長する姿を見て、他の院生にも指導員になることを勧めるケースもあるのだという。 この授業は2008年度から実施され、5年目に入った。そこで、この授業を履修した学生が院生となり、自らも指導員になるケースが出てきているという。「自分がコメントを付けてもらった経験は、教える立場になったときにもとても役立ちます。そういう循環が生まれるのを見ていると、教えることと学ぶことは一体なのだと、この授業を通して私自身も学んだ気がします」(佐渡島准教授)。指導員の声を取り入れ課題の出し方に改良を重ねる オンデマンド配信用の授業コンテンツは、初年度に作成したものを引き続き使用しているが、課題の出し方などに工夫を加えることで、細かな改善を重ねてきている。たとえば、最初は文章を書いて提出させるだけであったのを、履修者からのコメントも書かせる形にした。これは、一度も顔を合わせたことのない履修者にフィードバックを返すのはイメージが沸きづらいという指導員の声を反映したものだ。初回に履修者に自己紹介をさせたり、毎回コメントを自由に書かせたりすることで、履修者と指導員の間にコミュニケーションが生まれ、よりスムーズに指導できるようになったという。 また、授業で解説したポイントを反映できていない課題が多かったことから、作成した課題を提出する前に、履修者が自己チェックできる項目を具体的に用意して確認作業を促してみたところ、提出される文章の質が格段によくなったという。こうした改良は、ミーティングや面談を通して寄せられた指導員の声を積極的に取り入れたものだ。 この授業でフルオンデマンドという形態を導入したことについて、その最大のメリットは多くの学生に同じ内容の授業を提供できることだと、佐渡島准教授は指摘する。「特に基盤教育においては、多くの学生に限りなく近い内容の教育を提供する必要があります。しかし、教員同士がどんなに綿密な打ち合わせをしても、50のクラスで同じような授業を行うことは不可能です。その点、1600名もの履修者にまったく同じ内容のコンテンツを配信できるというのは画期的なことだと思っています。文章を書くという行為は一生続くので、多くの学生にこの授業を履修する機会を提供することで、ひとりでも多く、書き手としての自信を持って卒業する学生を生み出せるように。」(佐渡島准教授)。21(1)学生は課題文章を「レポート」として提出する。(2)指導員はWordを使って、提出された文章にコメントをつける。(3)指導員よりコメントがフィードバックされる。「学術的文章の作成」講義コンテンツ例Course N@viを用いた課題文章フィードバックの手順学生の提出した課題文章へのフィードバック例オンデマンド授業部門

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