第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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早稲田大学では、一部の学部・大学院において、半期をさらに分割し、4つの授業実施期間とする「クォーター制」を2013年度より導入している。全8週という短い期間で運営するにはさまざまな制約も生じがちだが、これを実施する手法としてフルンデマンド型の授業を活用しているのがこの事例だ。担当の秋葉教授にお話を伺った。複数科目の前提知識を学ぶための基礎科目をフルオンデマンド化し、クォーター制に対応カリキュラム再編に合わせ入門編をフルオンデマンド 秋葉教授らが所属する会計研究科では、2013年度よりカリキュラムの再編成が行われ、従来はレベル別に2つ用意していた「財務会計I」「財務会計II」(各4単位)という授業を、分野別に「財務会計A」・「財務会計B」・「財務会計C」という3つの科目(各2単位)に分けることにした。その際「財務会計I」の冒頭で行っていた入門編に当たる部分は、分野別の各科目で共通する内容となる。ちょうどクォーター制導入の話が出ていたこともあり、その部分を「財務会計リテラシー」という1単位(8回)の科目とすることとした。 この科目は基礎的な内容であること、春学期の前半と後半で同じ内容を2回実施することもあり、フルオンデマンドで行われた。「私自身はオンデマンド授業を取り入れるのは初めででしたが、川村教授と2人で担当するという事情もあり、分担すれば負担もそれほど大きくないのではと思い、やってみることにしました」。 全8回のうち最終回は教場で試験を行うため、全部で7回分の授業コンテンツを用意することになる。実際には秋葉教授が3回分、川村教授が4回分の授業を収録した。秋葉教授が担当した回の授業では小テストを、川村教授が担当した分の授業ではレポートを、それぞれCourse N@viの機能を利用して実施。学生は講義コンテンツを見た後で毎回何らかのアクションを課すことになる。出席確認という意味では講義コンテンツの視聴履歴でも対応できるが、小テストやレポートによって、コンテンツを再生しただけでなく真剣に取り組んだことを確かめることができる。「ただ、毎回となると教員側の負担も増すため、オンデマンド授業だからといってこういう仕組みを必須とする必要はなく、今後状況を見ながら検討していきたいと思います」。収録する動画の形態にはバリエーションを望む 初めての試みということもあり、オンデマンド用講義の収録は予想していたより準備に手間がかかったという。「最初は授業と同じような形でやろうとしたのですが、やはり目の前に学生がいないとスムーズに行かない面もあったので、2回目からはある程度の原稿を用意して臨むことにしました」。 今回収録した映像は、スタジオで座って話している上半身の画像と、資料用のパワーポイントの目次、各ページの画面が3分割される構成であった。現状、早稲田大学のオンデマンド授業ではこの形式で収録されているものが多いが、もう少し違う形があってもいいのではとも感じたという。「みんなが杓子定規に同じような形でやるのではなく、少し動きを出して教場の雰囲気に近くするなど、形式としてはいろいろなバリエーションがあってもいいのかなと思います」。クォーター制で生じる問題をオンデマンドの活用で解決 クォーター制自体については、秋葉教授は肯定的に捉えている。このシステムは、元々は海外の大学のアカデミックカレンダーに柔軟に対応できるようにすることで、海外留学生の受け入れや日本人学生の海外留学を活発化させるという目的で導入された制度ではあるが、それ以外のメリットにも注目しているという。「秋から冬にかけては入試の準備や論文の審査など授業以外の負担が多くなります。そこで、今年は秋学期の後半を少なくするように、秋学期の前半にクォーター科目を取り入れました」。研究会などの都合で7月に海外に行きたければ、春学期の後半を空けるということもできる。クォーター制をうまく利用すると、各教員の都合に合わせて授業期間を調整することが可能になるかもしれない。 ただし、春学期と秋学期を半分にした現状のクォーター制(2単位)の場合、8週に15回の授業をこなすのはかなりタイトなスケジュールになる。加えて、週2回を連続で行う場合、科目の登録変更の関係で初回の1週が受講できないだけでも影響は大きい。もし、最初の回がオンデマンド化されていれば、後からでも視聴して補うことができる。このように、クォーター制の導入に伴って生じるさまざまな問題に対応するために、オンデマンドの利用は有効な解決策となる可能性がある。 「この授業はフルオンデマンドでやりましたが、教場での授業と組み合わせて、たとえば基礎的な部分、あるいはルーティン化している部分のみを1、2回分オンデマンド化するという利用法もあると思います」。秋葉教授が担当している授業の中では、クォーター化した04秋葉賢一商学学術院大学院会計研究科教授

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