第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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現在、インターネット上には企業や個人などが発信するコンテンツがあふれている。マスワナ助教は、これを「豊富な資料資源」と捉え、日々の学習に教材として取り入れながら、その正しい活用方法や英語の使い方を学ぶ授業を展開している。Course N@viも併用したその授業運営の狙いを伺った。インターネットコンテンツを教材に生きた英語を学ぶネットコンテンツの英文を分析しCourse N@viのBBSに投稿 マスワナ助教の担当する「英語を使いこなすためのネットコンテンツ活用術」という授業は、インターネット上のコンテンツを教材に用い、英語を主体的に学ぶアプローチを習得させるというものだ。 素材としては、たとえばブログやウィキペディア、その他企業の経営理念やCSRを掲載したサイト、広報用ビデオやプロモーションなどのインターネットコンテンツを利用している。文書の内容、英語スタイル、語彙、文脈などを分析し、そのジャンルの慣例や多様性を理解することによって、特定の場面に適した英語を使えるようにする。 授業では、教員が各回の学習目的に応じた説明や分析例などを解説した後、ネット上にはどんなサンプルがあるかという事例も提示する。それを受けて学生は対象となるサイトを自分で探し、分析を行った内容をCourse N@viのBBSに投稿する。作業のための時間は授業中にも30分ほど設けているが、時間内に終わらない場合は宿題として、指定の期限までに投稿させる。 オープン教育センターの授業であるため、履修生は専攻分野も学年も英語力もさまざまだ。「それぞれの学生が、ネット上から自分の関心がある情報を見つけるアクティビティを行うことで、個人の興味やレベル差にも対応できると考えています」。 投稿内容に対する教員やTAによるフィードバックもBBS上で行われている。それを含めてBBSに投稿された内容は、教員だけでなく他の学生にも公開されている。しっかりとした内容を書いてくる学生ほど早く投稿してくる傾向にあるので、他の学生はそれを先に読むことで、教員が求めるレベルのものを書いてくるようになるという。 この授業での評価のポイントは、出席率や提出物など授業への参加度だ。提出物がかなり多いため、それを必ずこなしていくことを重視している。「日本の学生は英語を使う機会が少ないので、英語を発する機会を数多く与えることに意味があると考えています。内容のある英語を使う機会を重ねることで英語に慣れ、目的によって多様な話し方や書き方、使い方があるのだということを学んでほしいですね」。 学期を通してこうしたアクティビティを何度も繰り返すことで、英語力に自信のなかった学生も次第に英文サイトを見るのに慣れ、学期が終わる頃には抵抗がなくなるという。CCDLやBBS共有を活用し海外の学生との交流も導入 学期の中間には、ネット上で公開されているビデオを参考にしてプレゼンテーションを行うという課題もある。従来は教場で発表させていたが、2013年度からは、オーストラリア・グリフィス大学語学学校とのテレビ会議システムを用いた交流を導入し、発表している。3名ほどのグループで決められたトピックについて10分ずつ発表し、10分ほど質疑応答を行うという形だ。 リアルタイムの交流であるため、この課題を扱うときは、通常の教室ではなく機材の整った別教室を利用する。「映画館のようなスクリーンや舞台がある特別な環境なので、教室で行うよりも緊張感があって学生にとってはいい刺激になるようです。通常はサイトを見て分析してBBSに投稿という同じような流れが続くため、こうしたアクティビティは息抜きにもなるようで、楽しく参加できると評判は上々です。」 さらに新しい取り組みとして、2013年度秋からは台湾の文藻外語学院とのBBSを通じた交流も始めた。学期の間に3回ほど、1つのトピックについて意見を交換するというものだ。しかし、初めての試みということもあり、各自が自分の意見を書き込むだけでディスカッションにまで至らないケースも多かったという。学生からは「面識もない相手なので、誰に対して何を書けばいいのか分からない」という戸惑いの声もあった。そこで、途中からはすでに投稿された内容を受けて、それにコメントをつける形で投稿するよう指導したところ、多少状況が改善したという。 「今学期は授業にうまく組み込みきれなかったように感じています。話し合うトピックと授業内容との関連性や、投稿の指示の出し方など、教員側にもう少し工夫が必要だったかもしれません。どんなに立派なシステムでも、ただ提供すればいいというものではないことを改めて認識しました。教室以外の相手とBBSを共有するという試み自体は有意義だと思うので、どのような方法を取り入れれば学生にとって有益に使えるか、考えてみたいです。」36マスワナ紗矢子オープン教育センター助教

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