第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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早稲田大学では、ビデオ会議やチャットを用いて、外国の大学と共同で行う異文化交流授業(CCDL =Cross-Cultural Distance Learning)を導入している。交流時の使用言語としては英語や中国語、交流先も時差の少ないアジア諸国が多い。そんな中で、星井教授の授業では、ドイツの大学とドイツ語での交流授業を実践している。ドイツ語の授業でCCDLを導入生きたドイツ語を学ぶ機会を提供する身に付けたドイツ語をリアルに使える場を提供 この授業は、オープン教育センターが設置しているテーマカレッジ「Wonderland Germany」の演習科目として2006年度より行われている「ドイツ語テレビ会議」だ。春期はドイツのフンボルト大学、秋期はライプツィヒ大学の学生と、テレビ会議システムを使いリアルタイムな交流をドイツ語で行っている。 早稲田側の参加者は、主に交換留学などで1年程度以上ドイツ語圏に滞在経験のある学生が多い。「ドイツ語の場合、英語のように授業以外の日常生活で触れる場面がほとんどありません。中国語や朝鮮語など近隣諸国の言語と違って、ドイツ語圏の国は気軽に行くことのできる距離でもありません。そんな中で、せっかく覚えたドイツ語をリアルなコミュニケーションの中で使う機会を提供したいと思いました」。 ドイツと日本では、夏は7時間、冬は8時間の時差がある。そのためスケジュールを合わせるための条件は厳しくなるが、早稲田側の授業を5限や6限など夕方遅めの時間帯に設定しドイツ側の午前中の授業とマッチングしている。共通テーマについて調べテレビ会議でプレゼンテーション 授業時間中の交流は、初回で互いの自己紹介をし、相談してテーマを3つ決める。以後、各テーマについて1週ずつ日独が交互にプレゼンテーションをし合うという流れを全部で3セット行い、各学期で合計7回の交流となる。 準備の段階では、Moodleという外部のLMS(Learning Management System=eラーニングにおける学習管理システム)を利用し、BSSを2つ設置している。1つは早稲田の学生だけでの打ち合わせに使用し、もうひとつは日独の学生で共有して各テーマについてお互いに聞いてみたいことを投稿し合う。 交流のない回の授業では、BBSに出てきた質問のカテゴリ分けや、どんな内容を取り上げるか、どの部分を誰が担当するかなどについて、早稲田の学生同士で打ち合わせを行う。それに基づいて各自が調べた内容のスライドを用意して、発表の準備を進めていく。交流を行う回の授業では、互いの授業時間が重なる60分間ほど回線を結び、発表と質疑応答などの交流を行う。2013年度秋学期の場合は授業時間の後半に交流タイムが設定されたため、前半の時間は発表する内容をチェックするなど準備に費やし、その回の終了後、BBSを使って交流後の振り返りを行った。「交流時に気になった表現などをリストアップしておき、その場面ではこんな表現も使えますというような内容をアドバイスしています」。 同じテーマについて日独が1回ずつ発表を終えると、各自がテーマに関するドイツ語のエッセイをまとめてMoodleを通じ提出し、次のテーマについての発表の準備を進めるという流れになっている。ドイツ語を学ぶ日本人とドイツ語教育を学ぶドイツ人  通常、CCDLで海外大学と交流する場合は、互いの言語を学びあっている者同士の組み合わせであることが多い。しかし、この授業では、あえて日本語学科の学生ではなく、ドイツ語教育研究を専攻する学生を相手に選んでいる。「以前、日本語を学んでいるドイツの学生と交流したこともありました。相手があまりに日本語が上手なので、自分たちもがんばらなくてはとモチベーションは上がったようですが、先方の発表する回はこちらからの質問も含めてすべて日本語でのやりとりとなるので、ドイツ語を使う機会は半分に減ってしまうのが残念だという声がありました」。現在は日本語がわからない学生が相手であるため、交流はすべてドイツ語でのやりとりとなっている。 この授業では、交流を行わない週も基本的にはすべてドイツ語を使っているものの、どうしても日本人同士だと甘えが出てしまう部分もある。「その点、日本語がまったく分からない相手に対して、なんとかドイツ語で説明しなくてはいけない場を作れるというのは、非常に有意義なことだと考えています」。 先方は将来ドイツ語を教えようという学生であるため、どんな表現が伝わりやすいのか、コミュニケーションがうまくいかないのはどんな問題があるのかなどを学ぶ場となっている。34星井牧子法学学術院教授

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