第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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授業前のアクティビティによりディスカッションによる学びが深まる BBSに書き込まれる学生の投稿内容にも、回を重ねるうちに成長が見られるという。「各回の授業で具体的な調べ方のアドバイスも行っているので、その成果が出ているのでしょう。全体のレベルが上がる一方で意見が均一化してくる傾向もあるので、あえて私とは違う個性的な意見を採り上げてほめるなどの工夫もしています」。 従来であれば、教場の90分講義を聴くだけで完結してしまう授業が、事前のオンデマンド視聴、BBSへの書き込みというプロセスを経ることで、教場では学生の意見をベースにしたディスカッションに時間を割くことを可能にし、より発展的な内容にまで学習を深められるという結果につながっている。「この授業では特に、自分たちの生きている情報社会がどのようなものかを認識したり考えたりするきっかけにしてほしいので、自分で考えて調べる力を養ったり、他の人の考えを知る場になればと思っています」。 今後の構想としては、同じ科目を履修しているeスクール生と通学制の学生との間でも、それぞれの意見を交換できるような仕組みを作ってみたいという。「eスクールの学生は40代前後の社会人が多いので、通学制の若い学生たちとの親子のような世代間ギャップが、より有益かつ多様な意見交換につながるのではと期待しています」。講義コンテンツの収録時は間違えることを恐れない 最後に、オンデマンド授業の熟練者として、講義内容をスタジオで収録する際のコツを伺った。「まずは、間違いを恐れずに気楽にトライすることです。放送大学やiTunesUのように学外に公開するものは別ですが、学内の履修生に限定して視聴させるものの場合は、完璧を目指す必要はないと思います」。教員が間違えるような箇所は間違いやすいポイントでもある。学生が気づいて指摘してきたら訂正して説明することで、むしろ学びを深めるチャンスになるという。「オンデマンドで完璧な授業をやったら、学生はただ見るだけで参加する余地がなくなります。ミスを見つけて指摘することで授業に参加している実感が持てるのは、学生にもプラスに働くと考えています」。 動画の長さについては、eスクールでは1つのコンテンツは最大15分程度に収めることが基準となっている。「開始当初はネットワークの問題もあり、途切れずに動画を再生させるための技術的な制約もあったのでしょう。ただ、民放テレビで15分に1回CMが入るように、15分というのは人間の集中力が持続する時間の目安になるのかもしれません」。西村教授が収録しているコンテンツも、シラバスの内容や章立てに準じて、15分程度でひとまとまりになるように作成されている。ある程度長い授業コンテンツも、内容のまとまりごとに分けた動画になっていれば、学生の側も利用しやすいだろう。これらのノウハウは、オンデマンドを有効活用するためのヒントとなりそうだ。 そもそも、eスクールにおけるオンデマンド授業は、いかに通学制の授業形態に近づけるかという視点で行われてきたものだ。今回紹介した西村教授の試みは、実績を重ねる中で培ってきたeスクールならではの長所を、通学制にも展開して成果を上げているという点で、ユニークな事例だといえるだろう。BBSのコメント投稿は、学生の予習だけでなく、学生の理解度を把握し授業に臨める教員の授業準備にも役立つ。eスクールのオンデマンドコンテンツを通学生授業に展開。学生は事前に受講し、コメントをBBSへ投稿し教室授業へ。29

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