第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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海外の大学とリアルタイムに交流するCCDL(Cross-Cultural Distance Learning)は、通常は異文化交流として利用されるケースが多い。しかし、澤木准教授の授業では、英文アカデミックライティングの基礎を扱う授業でこれを活用している。接点がないように思われるチャットとライティング指導を、どのように結びつけているのだろうか。英文チャットで海外校と交流ログを素材にライティング指導授業時間外に小グループで集まり45分間チャットで交流する 澤木准教授がCCDLを導入しているのは、「作文演習Ⅰ」という教育学部英語英文学科の1年生を対象とした通年の必修授業だ。2年次以後必要となるアカデミック・ライティングの基礎づくりのため、パラグラフを基本とした英文の構成を踏まえて、構成の整った英文ライティングに慣れることを目標としている。 この授業では、春・秋各学期に各5~6回ずつ、海外の交流大学(2013年度は韓国の高麗大学)の学生と小グループでチャットを使ったディスカッションを行っている。グループは各大学2~3名程度で構成され、授業時間外に設定した時間帯にCCDLの専用教室において、約45分間文字によるチャットを行う。 チャットで話し合うトピックは専門的な内容ではなく、「両国における若者文化の相違点」など、学生が話しやすい日常的なテーマを選んでいる。前年度までの例を参考に教員側で案を提案し、学生からの希望も取り入れながら交流トピックを決定している。 各回の交流に先立ち、その回で設定したトピックについてどんなことを話し合うか、ある程度大枠を提示したハンドアウトを教員側が用意し、Course N@viにアップロードしておく。学生はそれを各自でダウンロードしておき、内容を把握した上でチャットに参加する。交流時は、技術のサポートスタッフはいるが教員は同席せず、学生の自主性に任せている。CCDLへの参加とそれに付随する課題の提出は成績対象となるため、時間外活動にも関わらず、学生の出席率は90%を超えている。内容に思考を集中できるようタイピング速度を向上させる チャットを行うことがライティング能力にどうつながるのか。そのひとつが速くスムーズに英文が書けるようになることなのだという。ライティングの能力には多面的な要素が要求されるが、ある程度まとまった量の英文を書くにはタイピング速度も重要となる。タイピング自体に意識が向いているようでは、内容を考えるのがおろそかになってしまうからだ。その点、即時に文字で会話を続けなくてはならないチャットは、絶好のタイピング練習になる。海外の相手校にはタイピングの速い学生が多いこともあり、学生たちは大いに刺激を受けるという。4月、7月、1月にタイピングテストも実施し、目標を決めてタイピング速度を向上させることを学生にも意識させている。 さらに、uency=流暢に書けること、すなわち、決まった時間内に多くの文字数を産出できることも必要だ。チャットでは日常的な話しやすいトピックを選んであるため、会話を楽しみながら流暢に書く訓練につなげることができるというわけだ。チャットのログを素材に要約をまとめる訓練をする チャット中に使う文体は、単語レベルのやりとりなど、くだけた会話体もそのまま許容している。その代わり、この活動をライティングの指導につなげるには、そこで終わらせないのがポイントだと澤木准教授は考えている。そのひとつが、交流終了時にチャットのログをUSBメモリにコピーして持ち帰らせ、要約を書かせるという課題だ。 比較対照して説明する、時系列の物を説明するなど、授業内ではさまざまなタイプのパラグラフライティングを取り扱う。それを実際に書いてみる練習のひとつとして、チャットで交わした会話のログを素材として活用するのだ。授業内では、パラグラフライティングについての方法論に加え、課題となる要約文の書き方についての実践的な指導も行っている。指定された文字数で要約するにはどんな要素を入れればいいのか。最初は穴埋め式で完成させられるテンプレートを用意し、それをベースにまとめるところから始める。 学生は、授業で学んだ内容を踏まえて、持ち帰ったログとチャット中にメモした内容を参考に、200~300w程度で会話内容の要約文を書き、Course N@viを通じて1~2週間後までに提出する。1年を通じてこの作業を続けることによって、いろいろなタイプのパラグラフの書き方を身に着けていく。「初めのうちはひな形に当てはめるだけだったのが、回を重ねるうちに、だんだんと表現のバリエーションも増えてきて、それぞれの個性が見える文章が書けるようになります」。 学生には要約文と共に毎回のチャットのログも提出させており、教員はこれにもすべて目を通した上で要約文を確認し、コメントを返している。たくさん話すグループではログだけで20ページ分に24澤木泰代教育・総合科学学術院准教授

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