第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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講義を動画として収録し授業時間外に試聴させるオンデマンド授業には、教場での授業を一切行わないフルオンデマンド以外にも、授業の一部をオンデマンド化するなどさまざまな導入パターンがある。近藤教授の事例では、従来の通年授業を半期で運営するために、半分をオンデマンド化して教場授業とミックスしている。15回分の講義をオンデマンド化し4単位の授業を半期で完結4単位の通年授業を半期で実施する 政治経済学部では、従来は通年で4単位という科目が大半であった。しかし、海外からの留学生や、逆に海外留学から帰国した学生への対応も考慮し、演習を除くほとんどすべての科目を半期で完結する形で提供している。 通年4単位で行っていた授業を半期で設定するには、春学期と秋学期でそれぞれ独立した2単位の科目に内容を分ける例が多い。しかし、前半(春学期)は初歩的な内容、後半(秋学期)に高度な内容を取り扱うようになることが多く、春学期のみの履修を希望する学生も少なくない。しかも、春学期に単位を取得していないと秋学期は履修できないという制約もあるため、秋学期の履修生が減少する傾向があった。「本来、春学期と秋学期を通して学ぶことで完結する授業なのに、後半を学ばないまま終えてしまう学生がいるという状況が課題となっていました」。 そこで、4単位を2単位ずつに分解するのではなく、週に2回授業を実施することによって半期で4単位の授業として成立させる試みが、ここ数年同学部での流れになってきている。近藤教授の担当する「計量経済学」という授業も、その一環として2013年度からは春学期だけで4単位を取得させる形に変更することになった。PC操作を伴う実習をオンデマンドで自習させる この授業は、複雑な社会経済現象のメカニズムをデータに基づいて具体的に分析することを学ぶものだが、その理論を学ぶと共にPCを用いた実習が必須となる。従来は、授業をPC教室で行い、ソフトウェアの操作説明や実習も授業内に行っていたが、この部分の説明動画を作ってオンデマンド化し、各自好きな時間に取り組ませることにした。 最近はエクセルなど基本ツールの使用経験がある学生が増えてきたことに伴い、学生によるPCスキルのレベル差が大きくなり、教室で一同に会してPC実習をさせることを非効率に感じる面もあった。その点、オンデマンドなら、各自の理解度やスキルに合わせて、自分のペースで効率よく実習を進めることができる。そこで、理論を説明するいわゆる座学の部分は教場での授業で行うが、PC操作を伴う実習部分はオンデマンドで実施するというように切り分けることにしたのだ。 すなわち、週2コマのうち、1コマは教場で講義を聴き、もう1コマ分はオンデマンド講義を見て各自が好きな時間に実習に取り組むという構成だ。これを15週続けると半期で30回分の授業を受けられることになる。 これにより、教室の確保や学生のスケジュール調整など、週に2回授業を行うために生じる問題を解決し、通年分の授業を半期で完結することが可能になった。従来はPC教室で授業を行う制約上、PC教室の定員である70名が履修の上限となっていたのが、より収容人数の多い通常教室が使えるため、結果としてより多くの履修生を受け入れられるようになったという利点もある。実習しながら質問できるようPCルームにTAを配置予定 オンデマンド用のコンテンツは、PCを操作している画面とそれを解説している音声をメインに、教員が解説している動画を挿入する形で作成。1回分あたりの長さは約60~70分程度としている。教員自身がカメラに向かって話す映像よりはPCの画面を使用する部分が多いこともあり、スタジオ収録ではなくCommons(*)を使って研究室で自作している。 使い始めてみると学生からは、「分からなければ巻き戻して聞くのでもっと速く話して欲しい」という要望が寄せられた。「少しゆっくり話しすぎたかなとも思うので、次年度の分は部分的に撮り直すつもりです」。ただし、内容的にはすぐに古くなって使えなくなるものではないため、半分以上はそのまま利用する予定だ。 オンデマンドを見た後、疑問点についてCourse N@viのレビューシート機能を利用して質問をしてくる学生には、Course N@vi上で回答をしている。しかし、文章での質問はハードルが高い部分もあるのか、教場で顔を合わせた際に直接質問してくる学生も多い。そこで、今後は実習をしながらその場で質問できるように、PCルームにTAを配置する予定だ。22近藤康之政治経済学術院教授

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