第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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従来座学で行われていたレクチャーをオンデマンドコンテンツ化し事前に予習させ、教場ではそれを踏まえたディスカッションや演習を実施する、いわゆる「反転授業」が注目されている。人間科学部の向後教授はeスクールで培ったオンデマンド授業のノウハウを生かし、通学制の授業でも2回に1回をオンデマンド化することで、教場での実習を充実させ効果を上げている。隔週で授業をオンデマンド化教場実習では体験型の学びを充実理論はオンデマンドで自習し教場ではグループワークに集中 向後教授の担当している「インストラクショナルデザイン」は、教え方の技術を学ぶ授業だ。教員志望者以外にも有用な、多様な場面で人に教えるためのスキルを学ぶ。「この授業では実際に自分でやってみながら学んでいくことが大事なので、教室で話を聞くだけの時間は最小限にし、学生が自分の手足を動かしたりディスカッションしたりする時間を充実させたいと考えました」。 そこで、1週目にガイダンスを行った後、2週目以後は各自でオンデマンドを視聴する週と教場で授業を行う週とを隔週に設置。その2週分をセットとして1つの単元を扱い、これを7セット行うと15週が終了という構成になる。 オンデマンドコンテンツは15分×4本で1時間以内に収まるように作成している。さらに、毎回Course N@viの小テスト機能を使って、オンデマンドを視聴しないと答えられないような簡単な問題を用意しておく。視聴履歴だけでは、動画を再生しただけでなく内容まで真剣に見ているかどうかが分からないためだ。 加えて、動画の中で説明した内容に関連して、自ら実践・考察した結果をまとめる課題を必須とする。翌週の教場での授業時には、5,6人の小グループに分かれ、各自が行ってきた課題を発表し合うところからスタートする。「オンデマンドを見てこなかったり課題をやってこなかったりすると、グループ内で話すことがなくて恥をかくので、きちんとやってくるようになります」。 教場でのグループワーク終了後は、その内容を振り返る課題をCourse N@viのレポート機能から提出させている。成績は、オンデマンド後の小テスト、課題、および教場のグループワークへの出席、さらに終了後の課題の点数を積み上げて採点する。「日々の活動をきちんと行うことを重視し、期末テストは行っていません」。 向後教授の場合は、eスクールで10年以上前からオンデマンド授業を行ってきた経験が今回の取り組みにつながっている。「せっかくeスクール用に作ったコンテンツを通学制でも活用したいという思いから始まりました。一方で、教場で真面目に話を聴いていない学生を見かけることへのフラストレーションが溜まっていたこともあり、通学制でもオンデマンドを取り入れてみることにしました」。 教場では、ほんの一部でも意欲のない学生が存在すると全体の雰囲気が悪くなってしまいがちだが、オンデマンドならどんな態度で視聴していたとしても、他の学生や教員には見えない。「結果的にこちらの伝えたいことが伝わり、きちんと課題をやってきてくれればいいと思っています」。 この授業の出席率は非常に高くなっており、教場で顔を合わせるのは2週に1回と限られる分、学生たちは意欲的に教場での活動に参加しているように見受けられるという。大人数での実習授業にはグループ作りの工夫が重要 こうした反転授業を充実させるには、教場の実習部分で学生をいかにコントロールするかがカギとなると向後教授は考えている。登録人数が100~200名にもなるこの授業で工夫したのは、小グループに分けることだった。「これだけの人数を相手に一斉に何かをしようとしても無理です。どんな風にグループを作って活動させるかが大きなポイントになります」。 そこで利用しているのが、大福帳と呼ばれる出席カードだ。一人1枚このカードを作り、教場に来る度に学生に配布する。カードには毎回グループの番号を振っておき、学生はカードに書かれた番号に従い自分の席に着くと、教員の意図したグループが出来上がるという仕組みだ。グループ分けは男女や学年が偏らないよう配慮してあるため、自然と高学年の学生が指導的な立場になり、1年生からは先輩の意見を聞けてよかったという感想が聞かれる。グループは2回続くと解散し、また新しいグループを作る。これによって、グループ内の相性などによる不公平感をなくすように努めている。 学生たちがグループワークをしている間、教員は教室内を回り、それぞれの活動を眺めながら、必要に応じてアドバイスなどを行う。授業の終了時には、各自の大福帳にその日の感想を記入して返却させる。「最初はグループワークが苦手でうまく発言できなかったと書いている学生もいますが、回数を重ねていくうちに慣れてくるようで、今回はうまくいった、リーダーシップをとれたというような感想に変わってきます」。20向後千春人間科学学術院教授

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