第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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「Waseda-net Commons」は、動画コンテンツの収録から公開までの作業をオンライン上で行えるシステムだ。今回紹介するのは、プレゼンテーションスキルを身に着ける授業において、このシステムをCourse N@viと連携する形で活用している事例である。時間や手間が効率化されるだけでなく、教育内容の充実に役立っているという点に注目したい。コンテンツ制作・共有システム「Commons」でプレゼン技術の向上に大きな成果プレゼンテーションを録画し簡単操作でアップロード 楠元教授と川原講師が担当している「博物館情報・メディア論」および「ツールとしての情報通信ネットワークI, II」はともにプレゼンテーションを中心とした伝えるための技術や手法を身に付けることができる。前者は主に学芸員の資格取得を目指し、後者はアカデミックリテラシーのスキル習得により時間をかける授業内容となっている。 この授業では学生たちにメディアを活用したプレゼンテーションを実践させることが必須となるが、それを録画して保存・共有するために、現在はCommonsが使われている。Commonsでは、カメラに向かって話す様子を録画すると共に、作成済みのパワーポイント資料などと組み合わせて、プレゼンテーションの模様を映像コンテンツとして保存できる。作成後は一連の操作で簡単に専用サーバーへアップロードできる点が大きな特長だ。 コンテンツの作成・アップロードが完了すると、視聴用URLが生成される。各学生が授業用に用意されたCourse N@viのBBS機能でこのURLを共有することで、教員や他の学生もこのプレゼンテーション映像を視聴できる。 教育学部視聴覚教室にはコンテンツ作成用として、PCのほかカメラやヘッドセット、さらにクロマキー合成用の背景など必要な機材がすべて整った実習室が用意されている。この授業を履修している学生は、予約すれば9時から5時までの間は基本的にいつでも利用できる。サポートのスタッフも待機しているため、分からない点があればすぐに対応してもらえる。 Commonsの利用自体は、カメラやヘッドセットなど動画を撮影できる機材とインターネット環境さえあれば、どのPCからでも利用が可能だ。「何度かここで体験してやり方さえ覚えればできることなので、必要に応じて自宅などから個人のPCで利用している学生もいます」。いつでも何度でも見られるから公平な評価、授業の効率化に繋がる 以前は、教場でプレゼンテーションを行わせ、記録用にはその模様をビデオ撮影していた。記録媒体は先生への採点用貸し出しのほか、参考資料用、授業を休んだ学生の後日視聴などでも頻繁に使われ、貸し出しがバッティングするなど管理が煩雑であった。 その点、Commonsを利用すると、発表内容は映像コンテンツとしてサーバーに保存されるため、これらの問題が解消する。さらに、インターネットにつながるPCさえあればどこでも視聴できるので、空いた時間にいつで見られる点でも利便性が向上する。頭出しなども手軽なため、何度でも確認してより的確なアドバイスを与えることができるようにもなった。 グループ発表ではメンバーによって貢献度に違いが出がちだが、グループ内で評価に差をつけることは難しい。川原講師はCommons導入後は、発表の前後に共同で作成したレポート文書を添付させ、発表自体はメンバー全員が1人ずつ3分以内の動画として作成することとした。これにより、発表の部分に関しては学生一人ひとりに責任を持たせ、それを個別に採点できるため、より公平な評価ができるようになったという。 Commonsを導入したメリットとして、楠元教授がさらに挙げるのは授業時間の効率化だ。履修学生が約40人もいる授業では、全員の発表をすべて教場で行うとそれだけでかなりの時間が取られてしまう。しかし、Commonsにアップロードすることにより、学生たちに授業時間外に視聴させ、その感想をBBSで議論させることもできる。その後、教員の講評だけを授業時間内に行うことで、空いた時間を他の解説や講義などに使うことができる。「実際に人前で話す練習も必要なので、1年生向けの授業では秋学期を利用して教場でプレゼンテーションを行わせていますが、春学期はこの手法を用いることで、授業内容をより充実できるようになりました」。 他の学生の発表を見たかどうかはCourse N@vi上の履歴で把握できるのに加え、BBSに感想を投稿することを義務化し、採点対象としている。教場で意見を発表させることもあるが、BBSを使うと投稿マナーを学ぶ練習にもなる。「文字だけのやりとりでは、相手がどう感じるのかを考えずに書いてしまう学生もいます。悪いところを見つけて批判するのではなく、本人も気づかないような優れた点を見つける、改善点を提案するなど、より建設的な議論になるよう指導しています。このように指導のある教育の場において18楠元範明教育・総合科学学術院教授

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