第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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自修用教材をオンデマンド化ネイティブの発音を繰り返し学習自修用の動画コンテンツをCALL教材として活用する 小川教授は、早稲田にCourse N@viが導入される以前から、CALL(Computer Assisted Language Learning)といわれるコンピュータ支援語学学習に関心を持ち、その教材作成に試行錯誤してきた。「Course N@viのリリース後は、学内共通の専用プラットフォームが用意されたことで、教材などを置くのが簡単になりました。Course N@viなら、学生がどこからでも容易にアクセスでき、公開範囲もコントロールできる。いろいろな授業で可能性が大きく開かれたと感じています」。 最初の頃は、PDFで用意した資料を配付するところから始めた。「Course N@viも最初はいろいろな制限がありましたが、今は扱えるデータの容量も大きくなり、アクセスするブラウザ環境も自由度が広がったことで、利用しやすくなりました」。 特に、スタジオで動画を録画できるようになったのが一つの転機となった。小川教授の担当する「中国語Ⅰ基礎」の授業では、自修用のオンデマンド教材を作成しCourse N@viにアップロードしている。動画の内容は、教場の授業で扱う項目に連動して教員がスライドを交えてポイントを解説するのに加え、同席しているネイティブスピーカー(以下:ネィティブ)に発音してもらうというものだ。毎回の授業にネイティブを連れてくることはできなくても、動画として収録しておけば、正しい発音を聴く機会をより数多く提供できる。 「スタジオでの撮影や、スライドと映像を組み合わせた編集、Course N@viへのアップロードなどの実作業は、すべて遠隔教育センターの職員がやってくれます。私自身はスライド用のパワーポイントを用意し、ネイティブを連れてスタジオに行くだけです。自分のパソコンでCALL教材を作っていた頃に比べると、格段に楽になりました」。 オンデマンドの導入は、準備に手間がかかるという理由で敬遠されることも多いが、実現したい授業内容に応じて相談の上、技術的なサポートや助言が受けられる体制は整っている。これを積極的に利用することで、精神的物理的な負担はかなり軽減される。 この授業にオンデマンド教材を導入して5年以上が経ち、コンテンツは少しずつ増えている。語学の基礎学習教材という性格上、一度作ったものは翌年以降も継続的に利用することができる。「毎年、一から作り直すのは大変ですが、どんどん追加して貯めていけるのはとてもありがたいですね」。環境を用意するだけでなく対面のフォローが重要 語学学習における発音指導は反復練習が必要となるが、教場で行える時間は限られている。その点、授業時間外にも自修できるのがCALL教材のメリットだ。「以前は専用の設備が整ったCALL教室まで行かなくてはならなかったのが、Course N@viのおかげでどこからも利用できるようになりました。Course N@viが学生をCALL教室から解放してくれたということですね」。 しかし、オンデマンドで学習できる機会を用意するだけでは、大学としての意味はないと小川教授は考えている。「大学で学ぶからには、学生が20人30人と集まって競争をすることに大きな意味があります。その競争心をいかに煽るかという教員の工夫が重要です」。そのための仕組みとして、この授業ではセメスターを4分割して到達目標を設け、オーラルテストを実施している。求めるレベルに達していない場合は、オンデマンド教材の該当する部分をピックアップし、そこを見て練習するよう指導する。そこには教員の説明もあるし、ネイティブの音源も聴きながら何度でも繰り返し練習もできる。そうやって復習させた上で再テストを行うことで、合格率は向上しているという。 この授業におけるオンデマンド教材は、活用のための配慮を教員が行うことによって、学生一人ひとりを直接指導しきれない分を補っているといえるだろう。統一単語帳の音声付録をCDから音声ファイル配信へ 商学部の中国語教室では、毎年10月に1年次の中国語履修者全員を対象として、単語統一試験を実施している。単位取得にはこの試験に合格すること必須となっているため、春学期から小テストを重ね、不合格者は再テストを受けさせるなど、そのための指導にも力を入れている。その結果、2000年の試験開始当初には50%を切っていた全クラス平均の合格率が、近年は70%を越えるよう14商学部の中国語教室では、統一単語帳の音声ファイルや、CALL教材として動画コンテンツを準備し、自修用に活用している。単に教材を用意するだけでなく、それらが効果的に機能するような対面指導とのベストミックスが欠かせないと小川教授は考えている。小川利康(写真右)商学学術院教授中村みどり(写真左)商学学術院准教授商学部中国語教室(代表:小川利康、櫨山健介、宇野和夫、尹景春、中村みどり)

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