第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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を実感させることができたと感じているという。 「英語放送ニュースを聞き取る際には、イントネーションや音の変化・脱落といった英語音声学の基礎知識を理解しないと応用力がつきません。音声や映像と文字情報を連携して提示できるデジタル教材は、真のリスニング力をつけるためには適した教材ではないでしょうか。今後も積極的に活用していきたいですね」(大和田講師)BBSとテレビ会議で、学んだ英語を実践に生かす 大和田講師の授業では、デジタル教材のほかにも台湾の文藻外語大学とのBBSによるディスカッションという形でICTを活用している。日台の学生4~5名でグループを作り、Course N@viのBBS上で英語のディスカッションを前期5回、後期3回実施した。 「前期は事前にトピックを決めて指定の英字新聞の記事を読み、早稲田と文藻がトピックごとに交互で先に書き込みをして、それに対してもう一方の大学が書き込むという形を取りました。ただ、この方式だと片方が書かないともう片方は返事を書けないという問題がありました」(大和田講師)。 そこで後期は少しやり方を変えて、まず日台の学生全員で同じ英字新聞記事や論文を読み、それについて200ワード程度のレポートをBBSにアップさせた。「レポートの最後には、必ず相手校に『日本には今こういう問題があり、私はこう思いますが、台湾ではどうですか?あなた自身はどう思いますか?』といったような質問を書かせました。つまり、お互いの文化の相違点を出発点とした異文化理解を目指しました。この質問に対して、相手も必ずレスポンスをつける。さらに、もらったレスポンスに対しても何らかのコメントをさせるようにしました」。この方法を取ったことで、BBS上のディスカッションを前期より活発化させることができたという。 また、BBSと並行して、文藻外語の学生とはテレビ会議も行った。「前期のテレビ会議は一度だけでしたが、後期は二度行うことができました。やはり、画面を通じてでも顔を合わせると、『あの○○さんが発言している』となって、BBSだけでやり取りするよりやる気も増したようです。TV会議も重要ですね」。 特に、後期2回のテレビ会議は双方の学生全員が一堂に会し、大いに盛り上がったそうだ。ただ、TV会議では、日本の学生の問題点も見えたという。文藻外語大の学生は英語専攻のため、英語のレベルは早稲田側よりかなり高かった。「これに対し、日本人の学生は、"I think~” や"Do you know~?"と短文で答えたり、聞いたりするものの、自分の意見とその理由をきちんと述べたり、的を絞った質問を相手に返すことにあまり慣れていないようでした」。 そこで、大和田講師は、このテレビ会議での文藻外語の学生の意見の述べ方の良い点を指摘し、議論に必要な表現集を配布し、学生たちに効果的な意見の述べ方・質問方法について考えさせた。 今の学生たちは、卒業後は会社でテレビ会議などを行う機会が多いのではないかと大和田講師。実際に顔を合わせるのとは違う環境でどのように話せば伝わるのか、何に気を付けるべきかを学べたことは学生たちにとって意味があることだと強調する。一方、文字ベースのBBSはじっくり表現を考えることができるのが利点だ。「BBSによるディスカッションでは、『質問力』を鍛えることができたのではないでしょうか」。一般の英語の授業でも、ここまでできる! 「英語上級コミュニケーション」は一般の英語の科目で、いわゆる「単位のため」に取っている学生も多いと大和田講師は語る。 「ただ仕方なく英語を取っているという学生も、デジタル教材で発音やイントネーションをわかりやすく学び、単語に対する深い理解を得られれば、英語にもっと興味が湧きます。さらに、BBSやテレビ会議で実際に台湾の学生とディスカッションをして、授業で学んだ時事英語や表現が通じれば面白いと感じるだろうし、逆にうまく伝わらなければもっと勉強しようと思うはずです」 デジタル教材、BBS、テレビ会議といったICTの取り組みを有機的に結びつけることで、学生がやる気を持って主体的に英語を学べたことは、ICT活用のいちばんの効果であると大和田講師。 また、台湾の学生たちは本当に日本に関心を持っていて、非常に熱心に日本人学生の話に耳を傾けるという。「そのため、早稲田の学生たちも説明のしがいがあります。会話の授業などで、英語の先生に日本文化を説明するのとはまったく違う、真のコミュニケーションを学べることも非常に意味があることではないでしょうか。遠隔交流に特化しているわけではない、一般の授業であってもここまでできるというのは強調したいポイントです」。動画を埋め込んだデジタル教材。語彙問題画面(左)と動画とスクリプトの聞き取り問題の答え合わせの画面(右)。英語のイントネーションを扱ったデジタル教材(左)と、Course N@vi上に配布したWordとmp3ファイル(右)。台湾・文藻外語学院とのテレビ会議交流の様子。議論が盛り上がり、授業時間終了後も残って自主的に話し合う学生もいた。BBSの投稿には、必ず自分の意見と質問を含めることでディスカッションを活発化させることができた。13

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