第2回 e-teaching Award Good Practice集 2013
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「英語上級コミュニケーション」の授業に、2013年度からデジタル教材を導入した大和田講師。また、授業内では台湾の大学生とBBSやテレビ会議上でのディスカッションも行っている。デジタル教材やBBSによるディスカッションなどの取り組みは、それぞれ有機的に結びつき、学生の学習意欲向上につながっているという。デジタル教材の導入とBBSでの異文化交流で、学生の学習意欲を高める文章や映像など必要な情報を、1画面にまとめて提示 2013年度前期から、教育学部の「英語上級コミュニケーション」の授業にデジタル教材を取り入れた大和田和治非常勤講師。教材作成にあたっては、吉田諭史助手に協力を求めた。「授業で使っている英字新聞やこれまでに大和田先生が独自に作成した教材を、実際にデジタル化する部分を担当しました」(吉田助手)。 作成には、動画や音声などを含んだインタラクティブな電子書籍を作成するアップル社の無料アプリケーション「iBooks Author」を使用した。完成した教材は大和田講師のiPadに保存し、授業ではiPadに表示したデジタル教材の画面を、教室内のスクリーンに大きく映して学生たちに見せている。デジタル教材というと、学生全員が各自端末で見るイメージを持つ人もいるかもしれないが、現在は大和田講師のみがデジタル教材を使用している。 作成したデジタル教材では、1つの画面に映像・音声とそれに関する問題をまとめて表示したり、表示している問題の答え合わせをしたりすることができる。「一画面で、文章と音声を同時に提示できるので、教える側としてはやりやすいですね」。以前から、英字新聞の聞き取りなどのために映像や音声を流すことは頻繁にあったが、「CDやDVDの場合は、ディスクを入れ替えたり、トラックナンバーを探したりと、操作に手間がかかりました」(大和田講師)。教員がiPadを1台持って行くだけで授業が行えるのは、デジタル教材の大きなメリットだ。 また、学生たちには画面に表示されるのと同じ英文や問題を記した紙の資料を配付しているが、以前は自分の机の上の用紙を見ているため、ずっとうつむいたままだったという。「今の方法なら、スクリーンを見ながら答え合わせができるので、学生たちが顔を上げているのもよい点だと思います」。学生の席までiPadを持って行って、正しいと思う番号を学生にタップさせることもできる。「手元で操作している内容が大きいスクリーンに表示されて、正解かどうかも瞬時にわかります」。 iBooks Authorには独自に用語集を作成する機能もあり、これも英語の学習に非常に役立っている。「たとえば、1つの記事に頻出しているある単語(例えば、know)の複数の語義を英英辞典から事前に登録しておき、授業中に単語をタップすると該当する語義が色分け表示されるようにします。こうすれば、授業では、学生にどの語義かを答えてもらいながら、語義の違いを一目で見せることができます」(大和田講師)。「もともとiOSに辞書機能もあってそちらも使えますし、固有名詞など辞書にない単語は後から用語集に追加登録することも可能です」(吉田助手)。 授業で使ったデジタル教材は、教材を欲しいという学生のためにCourse N@viにもアップしている。ただ、そのままの形式ではアップできないため、解答はWordファイル、音声はmp3ファイルにするなど形式を変換している。「現状では、Course N@viにアップすると、文章と音声、画像が一体化しているデジタル教材のよさは失われてしまいます。将来的には、ひとつにまとまった形で提供できるようになればと思っています」(吉田助手)。教材の作成も簡単で、今後も積極的な活用を検討 ところで、デジタル教材をゼロから作成することは難しいのではと考える人もいるかもしれない。しかし、iBooks Authorを使えば決して難しくないと吉田助手。「iBooks Authorの編集画面に、ドラッグ&ドロップで文字や画像、音声などを埋め込んでいくだけです。PowerPointで資料を作成するのと同じくらいの感覚でしょうか」。 重要なのは、何をどのように配置すれば授業で効果的に学生に伝わるのかを考えることのほうだという。「音声をどの場所に置くか、ビデオの表示画面は大きくするのか小さ目にするのかなど、大和田先生と十分に相談しました」(吉田助手)。「気を付けたのは、わかりにくくならないように1画面に情報を入れ過ぎないことですね」(大和田講師)。MacとiPadがあればすぐにプレビューができるので、使用する前には入念にプレビューと調整を行ったそうだ。 2013年度は、デジタル教材を取り入れた初年度だったが、効果についてはどのように見ているだろうか。大和田講師は前述の「顔上げ効果」のほか、「1画面の中で必要な情報をすべて提示できて、他の機材が必要なくiPadだけですべての操作ができたため、テンポよく授業を行えました。その結果、学生たちの集中力の維持に役立ったと考えています」と語る。また、リスニング力向上のために、イントネーションの違いによる意味の違いをデジタル教材で説明した際には、学生たちの反応から、今まで以上にイントネーションの重要性12大和田和治(写真左)教育学部非常勤講師吉田諭史(写真右)教育学部助手

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